マタニティ歯科Maternity dentistry.
マイナス1歳とは
マイナス1歳とは、胎児期つまり妊娠中のことです。
お子様の歯を虫歯から守る為には、生まれる前から取り組む時代になりました。生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には、むし歯菌(ミュータンス菌)はいません。むし歯の原因菌は、お子様と接している大人からうつるといわれています。10ヶ月間赤ちゃんはお母さんのおなかの中で育ち、そして生まれてからも、お母さんと常に一緒の生活をおくります。むし歯菌は、接触頻度の高いお母さんから感染する可能性が85%以上です。
むし歯予防のキーワードは「お母さん」です。
妊娠中だからこそ取り組めるむし歯予防があります。
お母さんのお口の中に住んでいるむし歯菌を減らして、母子感染の危険を低くする方法、楽しく出来るむし歯予防の方法を、たくさん知って頂きたいです。
赤ちゃんの歯ができる時期
実は、妊娠7週目にはすでに「歯のもと」がつくられています。乳歯(子どもの歯)の「芽」とも言える「歯胚(しはいと読みます)」は、胎生7週目頃からできはじめ、10週までにすべての乳歯が発生しています。永久歯(大人の歯)は胎生14週目ころからできはじめます。
出生後、乳歯が生えてからも永久歯は歯肉の中でゆっくりと時間をかけて成長していきます。赤ちゃんの歯はマイナス1歳からつくられ始め、お母さんの健康状態や栄養状態が赤ちゃんの歯に大きく影響します。
妊娠中の正しい食生活が、赤ちゃんの歯や味覚をつくるもとになります。
脳に味覚を伝達する機能をもつ「味蕾」も、妊娠7週目ころから形成されます。赤ちゃんが生後2~3カ月にはすでに自分の好みの味をもっているのはよく知られていますが、実は、おなかの中で羊水を通して味覚を形成しています。
羊水とはおなかの中にいる赤ちゃんのおっぱいのようなもので、赤ちゃんが飲むこともあります。この羊水の味や成分は、母親の食事が大きく影響しています。また、味蕾の形成のピークは妊娠5カ月~生後3カ月で、その数は10000を超えます。成人の味蕾の数が7500~8500なのに比べて約3割多く、それだけ鋭敏な味覚を赤ちゃんは持っています。また、赤ちゃんが出生後すぐにおっぱいを飲むための「ほ乳」の能力も、お母さんのおなかの中で育まれます。胎児が口を開けるようになるのは8~9週目ごろ、口唇を動かすようになるのは14週、指しゃぶりは15~20週目に、おっぱいを吸うための吸啜行動は24週目ころに行われるようになります。
このように、おなかの中ですでに「食べる」という発達過程はつくられており、それだけに妊娠中の食生活やライフスタイルはとても大切です。歯の性質の強さは、妊娠中のお母さんの栄養状態に大きく影響を受けます。
歯の強さは「歯の石灰化(硬くなること)」で決まりますが、これを促進するのはカルシウムやリンなどのミネラル分。胎盤が完成し、胎児と母体が臍帯でつながるようになる4~5カ月ごろに胎児の歯の石灰化はどんどん進みます。この時期にお母さんの栄養状態が悪いと、赤ちゃんの歯が弱くなったり虫歯ができやすい性質になると考えられます。
妊娠期のお口の状態
このように、お口の中の状態が悪化することで、歯のトラブルが起こりやすくなります。昔から「子どもを産むと歯が弱くなる」「妊婦は赤ちゃんにカルシウムをとられてしまって歯がボロボロになる」などと言われますが、これは医学的には全く根拠のない話です。
虫歯が多いのは、つわりで歯磨きがつらい、ちょこちょこ食いが多くなってしまうことなどが原因です。産後は子育てに忙しく、どうしても自分の歯のケアは後回しにしがちです。このことから、歯周病菌が増え、「歯がボロボロ」になってしまいます。
妊娠期の歯科治療
Q.歯科治療を受けても大丈夫ですか?
妊娠5~7ヶ月の安定期が最も治療を受けるには適しています。
この時期であれば虫歯などの一般的な歯科治療は何ら心配なく受けていただけます。(妊娠初期、後期は応急処置のみです。)
Q.レントゲン写真を撮っても大丈夫ですか?
歯科で用いるエックス線は、赤ちゃんに直接エックス線が当たることはないので危険度は相当低いです。さらに防護用の鉛のエプロンを着用していただいて撮影を行うので問題ありません。
Q.麻酔の注射は大丈夫ですか?
痛みを我慢して治療を受ける方がかえって母子ともにストレスになることもあるので、必要に応じて麻酔を行なうこともあります。
歯科麻酔は局所麻酔であり、麻酔薬の使用量も非常に少量で済むので、順調な妊娠中であればお腹の赤ちゃんにまで影響を及ぼすことはありません。
Q.お薬を飲んでも大丈夫ですか?
基本的には、お薬を使用しない方向で考えます。
※お薬を使用しないことにより悪い影響を与える可能性がある場合は、妊娠中に使用しても影響が少ないお薬を必要最低限処方することがあります。